満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
「さてと…。」

綾香は一息ついたようにそう言うと、右手を天に向けさし伸ばした。

「あなたには悪いけど逃げさせてもらいうわね。」

綾香は魔法を使う。

天に向けられた手からは、静かに、しかしすばやく大量の霧が発生していく。

霧は勢いをつけながらあたりの建物、町を包み、人々の視界を奪っていく。

その霧の中心にいる誠。

いきなりの出来事での驚きもあるが、何より今はいきなり発生した霧によって、ほぼゼロになった視界に困惑していた。

が、意外に心持ちは冷静である。

今分かるのは、綾香が逃走するために霧を発生させたこと、あとは何故か上から優しい風が吹き付けてくることだろうか。

…ん?上?



< 60 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop