満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑

1-Ⅲ

バザッ、大学の喫煙所。

立て続けに白い煙を吐き続ける誠を横目にイトーが何処から持って来たのか新聞紙をひろげている。

「おっ、また、でてるぞ。」

そう言いながらイトーは誠に新聞を差し出した。

「あ、何?」

誠は口に煙草を加えたままメンド臭そうに新聞を受け取った。

「どこ?」

「あ~と、右上の方。」

『怪盗 glasses witch 今度は隕石』

先日、未明に県営美術館にから10万円相当の隕石が盗まれた。
現場には犯人と思われる「glasses witch」と名乗る人物からのメッセージカードが残されていた。「glasses witch」と名乗る人物の同様の犯行は今回で4件目であり…………………。

誠はそこまで読むと紙面から目を上げた。その目はイトーをジットリと見上げている。

「で?コレがどうかした?」

イトーはキョトンとした表情で

「オモシロクね?」

と言った。

「そうか?」

誠は新聞紙をイトーに返しながらスバーっと煙を吐き出した。

「だってコレ全国紙だぜ。地元のことが載ってんだそ。」

イトーの目は爛々と輝き、傍目から見ても分かるくらいに興奮している。

「こんなんで全国紙に乗っても何も嬉しくねぇよ。」

誠は吐き捨てるように言葉を押し流した。
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