満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
「んでよ。」

イトーが半身ズイッと乗り出し、そのまま前傾姿勢になる。

「何?」

誠はまたメンド臭そうに答えた。

「捕まえようぜ」

「は?」

「だから捕まえようぜ。コイツを。」

……何言ってんだコイツは。アホだとは思ってたけどマサかココまでアホうだとは………。

誠は視線でそれを訴えてみた。

「面白そうだろ?なあ?」

効果は無いらしい。

イトーはアホみたいにはしゃいでいる。

「アホかお前は年考えろよ。俺ら今年でハタチだぞ。」

誠は煙草の煙の代わりに溜め息を吐きながらイトーに言う。

発想が中学生以下だ。

誠の視線はガキみたいだから辞めようや。と物語っていた。

「確に俺らは今年でハタチだけど?それがどうかしたか?」

イトーは誠の言葉と視線が意に解しないらしい。

………ダメだ。コイツ………。

「それに…」

イトーはニンマリと笑いながら続けた。

「あのお姉さまとお近づきになれるかもしれないぞ?」

…お姉さま?…………あぁ、川乃瀬さんのことか…。

「そのお姉さまとコソ泥捕まえるのに何の関係があるんだょ。」

誠は白い煙を空中に吐き出しながら言った。
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