36.8℃の微熱。
あたしの腕をつかんだまま、物陰に隠れて声をひそめる先生。
今日は先生に全部おごってもらえると思って、お小遣いはもらってこなかったあたし。
それはマズい!とウンウン頷く。
「よし、いい子」
「・・・・」
「じゃあ突入開始」
「・・・・」
いい子? 突入?
なんじゃそりゃ。
スパイさながらの先生に多少ついていけないけど、彼女のフリで美味しいパスタが食べられるなら。
うん、あたし頑張る!
そうしてやっと物陰から店内へ出たここは、男性用フォーマルウェアのショップだった。
引きずり込まれたときはお店の様子を見る余裕なんて少しもなかったけど、なるほど・・・・!
お洒落なネクタイ、ワイシャツ、スーツなんかが、これまたお洒落な感じで置いてある。
そういえば・・・・。
塾講師のときの先生は、いつもこんな感じの服を着ているっけ。
よくここに来るのかもしるない。
「いらっしゃいませ〜」
彼女のフリということで腕を組んで服を見ていると、女性の店員さんがやってきた。