36.8℃の微熱。
そうして他愛のない会話をしていると、だんだん先生の返事が遅くなってきた。
全部こっちから話題を振っていたけど、それでも会話が成り立ってちょっぴり嬉しかったあたしはなんとなく不思議に思う。
けれど今、心はちょうど焼きたてのいい匂いに奪われていて。
「うわぁ!パン屋さんもある〜!家にお土産買っていこうかな。あとで寄ってもいいですか?」
「・・・・あー、いいよ」
「やった!」
と“食べ物大好き人間”って言われてもおかしくないほど、パンにはしゃいでしまった。
すると、急に立ち止まる先生。
「・・・・小春」
聞こえるか聞こえないか。
それくらい小さな声でつぶやいたかと思うと・・・・ぐいっ。
「えっ!? なな、なに!?」
「ちょっと顔貸して」
「・・・・はぃーーっ!?」
先生に腕をつかまれ、ズルズルと立ち止まった先のショップに引きずり込まれてしまった。
一体何事!?
「江田ちゃん、今から俺の彼女のフリして。先生なんて言ったら自腹でパスタのお金払ってもらう」