36.8℃の微熱。
 
「じ、じゃあ、あたしはマリアンヌの様子でも見に行ってくるよ。近くのスーパーまで買い出しに行ってるとこだから」


すると、ユカ様がそう言って、気を利かせて席を外してくれた。

どうりでマリアンヌさんの姿がなかったはずだ、なんだ、ただの買い出しだったのか。

あ、いや・・・・“ただの”って表現はおかしいけど、なんとなくね、そんな気分だ。


「いってらっしゃい」

「いってきま〜す」


ユカ様に軽く手を振りながら、気をつけてね〜と送り出す。

さて、と。

気持ちを入れ換えて。よし。


「・・・・浅野君、あたしの話、ちょっと聞いてもらえるかな?」


ユカ様が作ってくれたせっかくのチャンスを台無しにしないためにも、まずはあたしから。

厨房をせっせと掃除している王子に話かけた。


「うん。・・・・な、なに?」

「お昼のときはありがとね。あのお姉サマたちの1人からさっさ聞いたの。浅野君、話しに行ってくれたんでしょ?」

「ああ、まぁ・・・・うん。茜があんまり泣きそうな顔してたから」

「そっか」
 

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