36.8℃の微熱。
 
いいのか王子、アナタはそれで。

「一目惚れ」ってサラッと言ったけど、よーくよーく考えてみてはくれないだろうか。

机に荷物をぶちまける女子に一目惚れなんて聞いたことがない。


「浅野君の趣味、よく分からん」


分からん上に不可解だ。

永遠のナゾかもしれない。


「ハハッ。茜は分かんなくていいんだよ。誰かを好きだと思う理由なんて、本当はあってないようなものなんだから」

「・・・・そういうものかな」

「そういうものだよ」

「はあ、なるほど」


・・・・深い。深すぎて、これまたあたしにはよく分からん。

でも、王子が言うと妙に説得力があるのはどうしてなんだろう。

最初は半信半疑だったとしても、最後には“そうか”と納得させられる強い力を持っている。

例えば、今みたいに。


「だからさ、茜。アイツのことなんか考えてないで、目の前の俺とつき合ってよ」

「浅野君・・・・」

「俺、優しくするし、アイツみたいに茜を泣かせるようなことも絶対にしない。・・・・顔だって、そんなに悪くないじゃん」
 

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