36.8℃の微熱。
 
・・・・そんなこんなで、あたしは携帯を落としてしまったことに全く気づかなかった。

気づ“け”なかった。










「ねぇねぇ、携帯番号交換しようよー。私、ユカっていうの。席も前後なんだしさー、友だちにならない?」


それに気づいたのは、辛くもこのときだった。

入学式が無事に終わって、これからお世話になる教室に戻ってからのひとこま。


「あ、うん。ぜひ!」


そう言って、あたしは急いで鞄から携帯を取り出す。





───けど。





「ねぇ、まだー?」

「うーん・・・・」


友だちになろうと言ってくれたユカちゃんは、あたしのあまりの鈍くささにいい加減痺れを切らす。

あたしのほうは、そりゃあもう必死で探す探す・・・・!


最後は“こうなったら!”と鞄の中身を机に全部広げて。

でも、友だち作りのアイテムは見当たらなくて。


「もういーよ」


そう言われる始末・・・・。

そこで初めて、携帯を落としたことに気づいた、というわけ。
 

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