36.8℃の微熱。
 
それからすぐ真面目な顔になった先生は、念を押すように聞いた。


「本当に何か探してたわけじゃないの? なんなら一緒に探す?」

「い、いや・・・・」

「江田ちゃんが俺を嫌いなのは分かってるけど、元教え子じゃん。ほっとけないよ。ね?」

「先生・・・・」


あたしが嫌っているの、先生は知っていたんだ。

それなのにあたしのために?

・・・・なんか嬉しいじゃん。


悪いことをしたなと反省したあたしは、さっそく先生に話した。

たぶん、朝の満員電車で携帯を落としてしまったこと。

それで、その携帯は入学祝いで親に買ってもらったとても大事なものだということ。


「初めて持たせてくれた携帯なんです・・・・。だから、見つからなかったら困るんです。どうしても見つけたいんですっ!」


そう涙ながらに訴えかけると、ふむふむと頷き、何かを考えている様子の先生。

もしかして、心当たりでも?

一気に期待が膨らむ。


「江田ちゃんさぁ」

「は、はいっ!」


もしかして・・・・もしかする!?
 

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