蝉時雨を追いかけて
 

***


 朝7時55分、おれはテニス部の部室にいた。

9時から練習開始なのだが、顧問であるゲジから昨晩電話があり、他の部員より一時間も早く呼び出されたのだ。

おかっぱも呼び出されているはずなのだが、まだきていなかった。

昨日の夜、なにかあったのだろうか。


 そんなことを考えていると、部室のドアが勢いよく開いて、おかっぱが飛び込んできた。


「オイ、拓海!」


「遅いぞ。はやく着替えろ」


「それより、あのふたり、また進展があったみたいよ」


「拓馬と北村麗華か?」


「そうよ。部長とマネージャー、昨日の夜ついにチューしたらしいわ」


 やはり、だれかがあのふたりを見張っているのだ。あの写真を撮っていた人物に違いない。

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