愛されて
本当にママも…
井上先生のこと、殴りたいって思うのかな?

私は歩香先生の車に乗って、一緒に家に帰った。

「ただいま…」

「お邪魔します…」
歩香先生と一緒に帰ってきた私を見て…ママは驚いていた。

「歩香姉ちゃんまで、どうしたの?」

「家庭教師の先生は?」

「まだ…何かあったの?」

「何かあったじゃないわよ…由香、遥香の腕に気づいてないの?」
歩香先生が怒ったように言った。

キッチンにいたママが、私たちのところにやって来た。

「腕?」
ママが私の手をとった。

「何?このリストカットのような傷は?」

「やっぱり気づいていなかったんだ。家庭教師の先生にやられたって…」

「ウソ!?」

「本当よ…」
歩香先生が冷静に言った。

ママはやっぱり、信じなかった。

「ウソでしょう?遥香、勉強するのが嫌になったから…そんなウソを…」

「ウソじゃないわよ。これも見なさいよ…」
歩香先生が袖をまくった。
タバコを押しつけられた跡が見えた…

「これも…あの家庭教師がやったんだって。遥香、タバコなんて吸わないから、あいつがやったのよ…」

「本当に?」

「うん…」

私は頷いた。

ママの顔がこわくなって。
「遥香が…勉強できないからいけないのよ」
と冷たく言った。


やっぱり、ママは信じてくれなかった…

やっぱりママは歩香先生と違う。
同じ兄弟なのに…
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