愛されて
「いい加減に目をさましなさいよ…」

歩香先生がママの頬を叩いた…

「ちゃんと…遥香のことを考えなさいよ。あんた、遥香がこんな目にあっているのに…遥香が悪いって…どう考えても、あの家庭教師の人が悪いでしょう」

怒ったように…
歩香先生が言った。


「あの先生がいくら…遥香を傷つけても、やめてもらうわけにはいかないのよ…」

「どうして…?」

「あの先生はね、遥香を女子大付属に合格させるためにお義母さんが頼みこんで…やっとできてもらった先生なの。優秀な人で…これまでに何人もの人を女子大付属に合格させているの…」

「でも…」

私は黙って…
ママと歩香先生の話を聞いていた。

「でも…じゃないの。遥香が…女子大付属に合格するには…これぐらいのこと我慢しないと…」

我慢!?
我慢するのは私なのに。

「歩香姉ちゃんから見たら、バカみたいかもしれないけれど…遥香が女子大付属に合格しない限り、私は…樫木家の嫁として認めてもらえないの。そのためには…遥香には我慢してもらわないといけないの…」

ママだって必死なのだ。
おばあちゃんに“嫁”として認めてもらうために…
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