君と、ずっと。
「英里…」


雅斗の甘くて、優しい声。

吸い込まれそうな、あたしを真っ直ぐ見つめる瞳。

あたしの力じゃ到底敵わないおっきい手。

いつの間に大人になったんだろう。

ついこの間までは、優斗さんの後ろにくっついてて泣き虫だったのに。

こんな状況でも…雅斗しか、見えない。

パタ…ン

ドアの閉まる音が聞こえた。

あたしは思う。

雅斗の『所有物』。

それはどうゆう意味?

ゆっくりと雅斗の顔が近づいてくる。

雅斗、顔…近い!!

ぎゅっ

あたしは強く目を瞑った。


「っ――」


ビクッ

雅斗の吐息がかかって、あたしは思わず反応する。

かぁっ

急に顔が熱くなって、これだけでもう立ってられないくらい…足が震えてる。


「…くぞ」


「早く…行くぞ」


耳元で囁かれた雅斗の声は、いつも以上に甘くて、優しくて…何だか変になりそう。

くらっ

視界が揺れて、雅斗の瞳が見える。

トク…ン

あたしの鼓動が少し聞こえる。

雅斗の瞳の中にいるのは、あたし。


「早く行くぞっつってんだよ!!」


ぐいっ

雅斗はあたしの肩を持って、引き離した。

パタン

閉められたドアを見つめながら、あたしはその場に座り込んだ。

何だかどうしようもなく目眩がする。

あー…もう、分かんない。
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