ろく
なあんて……待て!
あれが不思議で済まされるか?
人語を話して、説教する猫だぞ?
あいつなら遣りかねん。
−シャムじゃなかった?
「は? シャム?」
−うん、シャム猫。白っぽいクリーム色で足だけ黒くて……。
「そう……だけど?」
−で、左前足だけ白くなかった?
「……うん」
やっぱりろくだ。
ろくがやったんだ。
やってくれたんだ!
−恩人だね!
「そうだな! ……そうそう、猫といえばさ、誰かのロッカーに猫のフンが入ってたんだって」
そうだ。
これもきっとろくの仕業だ。
あのクソ女の大事なバーキンの中に、猫のフンが入っていたそうだ。
クソ女が疑っていたのは、私を見る目でわかったが、残念ながら私はその爆撃が行われた時間帯、社用で外に出ていた。
あの臭いの取れないバーキン。
質屋でさえ引き取ってくれないだろう。
ざまあみろ!