ろく

あれから何度も、あの路地へ行った。

だけど、ろくにはとうとう会えなかった。

もし、飼い猫だとして、電柱に迷い猫の張り紙がしてないかも注意深く見ていったが、それらしいものはなかった。

いつ貼られたものなのか、随分と色あせた貼り紙の中の、太りすぎたダックスフンドだけが、悲しい目をして私を見ていた。
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