最後の恋はアナタの隣で
その心地好い感触と春樹さんの香りの所為で、更に気分が良くなった私はカウンターに伏せて瞼を閉じた。


……すぐにでも夢の世界へ飛んで行けそう。


意識がズルズルと引きずられるようにして、徐々に眠りの中へと落ちていく。


――その時。


誰かが私の体をグイッと引き起こし、背中に担いで歩き出した。


私は反射的にその首へ腕を巻き付ける。


夢現の中で春樹さんかな?と思ったけど、すぐに違和感に気が付いて、薄っすらと瞼をこじ開けた。


すると、視界に映ったのは漆黒の髪の毛で。


「……千秋……?」

私は小さな声でその名前を呼んだ。


「あ、涼ちゃんごめん。春樹もお酒飲んでるから、俺がタクシーまで連れてくね。少しの間我慢してて」

「……」

千秋が足を進める度に、甘い香りがフワリと揺れる。
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