あなたの歌
駅のホームを行き交う人たち。

私は一体、何に向かえばいいんだろう。
この先に、何が待っているというのだろう。
抜け出せない迷路に、やってきてしまったのだろうか。


嘉川美沙。社会人1年目。
仕事へと向かう足取りは、いつものように重い。

夢を諦め、企業に就職した。合わない仕事を続ける毎日。
生きている実感がない。生きがいがない。


美沙は…歌いたい、それだけを生きがいとしてきた。
それが美沙の唯一の誇りである。
その美沙がいつしか歌うことさえ忘れてしまった。


耳につけたイヤホンからは、夢を歌った曲なんかが流れている。

絶えずやってくる電車の窓には、虚ろな目をした美沙の横顔が写っていた。
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