花が咲く頃にいた君と
朝食は絶対に食パンと、イチゴジャム、オレンジジュース。


パンが焼けるまでの時間が待ち遠しい。


毎朝、制服に着替えながらそわそわしている。



十夜は朝帰りで、眠そうに体を布団の中で捻る。

『うるさい…』

眠そうな視線が、あたしを捉えてしゃがれた声が微かに笑いを含む。


トースターをチラチラと気にしながら、十夜へ視線を向ける。


『結女はそういうとこ、まだまだ子供だな』

布団を被り直し、十夜はいつもと同じことを口にして、また眠ってしまった。



十夜だけが知ってる。

あたしが朝食が一番好きなこと。


そわそわして待ちきれないこと。




その声がもうこの部屋には無い。


悲しさが、いきなり溢れてきた。



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