花が咲く頃にいた君と
突風が吹いて小夜は瞳を、強く閉じたけど


あたしとその人だけは、動けないでいた。


ドクンっ
心臓が大きく鼓動を刻んだ。



懐かしい色素の薄い髪と瞳、よれよれのセーターではなかったけど

淡い色のカーディガンは良く似合っていた。



「お兄ちゃん、結女ちゃんだよ!」


肩で息をして、うっすらとその白磁の額に汗をかき、その人はゆっくりこっちへ歩み寄ってきた。


それに比例してあたしの鼓動は早くなる。



「走ってきたの?お兄ちゃんらしくない」



いつの間にか離れたあたしたちは、小さく指を絡めてた。


そこから伝わる温もりがリアルで、ドクドクと脈打つ身体が小夜に伝染するんじゃないかと思った。



「あぁ、さっき見えたら…」



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