花が咲く頃にいた君と
大好きな優しい目を細めて、彼は穏やかに笑った。


それは小夜に似てて、やっぱり二人は兄妹なんだと思い知った。



「桜並木でカメラ構えてたでしょ。一目で分かったよ。

…結女だって」

「えっ…」



彼に釘付けだった。

本当にあたしだけの世界だった。


するりと小夜の温もりが無くなっていて


気付いたら

「じゃ、また後でね」

なんて去っていく小夜がいた。
その向こうを見れば、小夜を待つ、柊が居て


小さく笑いかけてくれた。



小夜達に気を取られているうちに、さっきまで繋いでいた手を彼、東向日に握られた。


びっくりして振り返れば、真剣な表情の東向日がいた。



「よそ見無し、僕だけ見てよ」


フッと息をついた東向日はもう一度笑って告げた。



「僕は結女だけを、好きだよ」



都合のいい夢かもしれない。

東向日が目の前にいて、告白されて、あたしはどこまでも東向日を求めていたのかもしれない。



だからこれは都合の良い夢。


それでも…



「会いたかったよ」


広げられた腕の中に飛び込んで、寂しかった時を埋め尽くす。



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