花が咲く頃にいた君と
下宮比さんは木下さんに救急箱を持ってこさせると、あたしの前にドカッと座った。



「あんまむちゃくちゃすんなよ?」

「これからはちょっと荒れる、多分」


あたしは下宮比さんから視線を逸らして、瞳を伏せた。



「お前、忘れてないか?俺に飼われてんだぞ」



その言葉にあたしの肩がビクついた。



「下宮比さん、あたし…」



あの時、下宮比さんはあたしを飼った。


けど、あたしは



伏せた視線を下宮比さんに戻す。


綺麗な言葉が見つからない。


だから、単刀直入に言う。



「買われちゃった」



消毒液の染み込んだコットンが床に落ちた。




下宮比さんは一発で理解したらしい。


その鈍色の瞳が見開かれ


あたしをそのまま映していた。



“匙は投げられた”




そうあたしの知らない所で。



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