花が咲く頃にいた君と
「もういいでしょ。あたしバイトあるから」


あたしは奴等の腕を振り払い、反対方向へと歩き出す。


速く行かないと、木下さんに迷惑がかかる。


あたしはそれだけを思ってバイトへ急いだ。




いつも通り下宮比さんを起こして、いつも通り店を開ける予定だった。



「ちょぉぉっと、待てぃ!」


お店を駆け回るあたの襟足を、下宮比さんは突然引っ張った。


「おい、結女その傷どうした?」


猫のように襟足をつままれたまま、顔を覗き込まれた。


左の眉をヒクリと上げて、下宮比さんは凄みのある声を出した。



さすがやくざの息子、といったところだろうか。



「別に」

「何が別にだ、この黒猫」


グッと両頬を片手で挟まれて、傷口が八重歯に当たって痛い。



「いひゃい(痛い)」


口を前に突き出して、元々ブスな顔が、よりブスになる。


「黙って手当てされろ。今度はどこの野郎ともめた?」



下宮比さんの手を退かして、あたしは答えた。


「今回は女だった」

「お前も問題の耐えない猫だな」

「猫じゃないし、これは不可抗力」


< 77 / 270 >

この作品をシェア

pagetop