億万色Love



「まだ何か用?」

「え?あ…、じゃあ帰るね」

「ん」


ベンチから立ち上がって、振り返った時……

私は恐ろしいものを見てしまった

「………?!」


ベンチの後ろには


昼休みに声をかけてきた女の人…中西さんが、座っていたベンチの後ろで腕を組んで立っていたのだ

顔は………

この世の生き物とは思えないほどに怒りを表していた


「なんで一緒にいるのよ……、何を話してたの?」


中西さんの存在に気付いてなかった陽介くんは、その声に反応して振り向いた


陽介くんが振り向いたと同時に、中西さんも陽介くんに視線を移した


「陽介……この子は誰?陽介のなに?」

「………別に」


中西さんの質問に冷たく返した


「別に…って…」


そして視線は私に戻った


「あなた、何の用があって陽介といるの?」

「………私は……」


「はっきり言いなさいよ!こんなコソコソして、昼休みには知らない顔してたくせに…。何がしたいわけ?」

知らない顔なんてしてない……

急に話し掛けられて、内容が分からなかっただけだよ…


「別に私は、おじさんに渡し物を頼まれただけで…」

「おじさん…?」

「……!!」


やば…!

つい…おじさんって言っちゃった…


理事長のこと、そんな風に呼んでたら、この人ますます怒る…

陽介くんを見ると、ダルそうにベンチによたれかかっていた



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