雪に消えたクリスマス
「な、創真?どうしてここに?」
 ウララは、何が起こったか理解できていないようすで目を白黒させていた。
 そんな驚いた様子も、今の俺には愛おしく見える。
「偶然だよ…いや、運命的って言うのかな♪ちょっと小粋なカフェに入ったら、ウララがいたのさ…ウララこそ、どうしてここに?仕事は?」
 俺は、さも偶然を装い、イケシャーシャーとそんな事を言う。
 ウララは、明らかに困惑した表情だったが、俺はあえてそれを無視して、ウララの向かいの席に腰を下ろした。
「今日は…ちょっと、人と会う約束があるから早退したのよ…」
 ウララは、もうすでに俺が知っているとも知らずに、少し言いにくそうに答える。
 俺に内緒で葉子と会っていた事に、気が咎めているのだろう。
「へぇ~?そうなんだ~?あっ!なんか今、俺の第六感にピーンと来たぞぉ!何となく、その相手が誰なのか分かる気がする…」
 俺は、わざとらしく驚いて見せてから、指を額に押し当てる素振りを見せる。
 その時、ウララがゴクッと生唾を飲んだのがわかった。
「その約束の相手とは………!?」
「僕ですよ」
 俺は、自分の背後でしたその声に思わず言葉を無くした。
 聞き覚えのあるその声…。
 俺は、恐る恐る後ろを振り向いた。
 そして振り向いた途端、俺は息もできなかった。
 そこにいたのは………。
「俺?」
 そこにいたのは、正しく俺だった。
 俺は初め、鏡でも見ているのかと錯覚したが、そうではない。
 鏡なら、俺が今目の前にしている男の服は、俺と一緒にならなければおかしい。
 しかし、その男が着ていた服は、アクアスキュータムのコートに、濃い茶色のスーツを着ている。
 俺はというと、いつもの皮のコートにグレーっぽいトレーナーに黒のジーンズ…。
 こいつは…いったい………?
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