セピア
 そう李に言われて花梨は李の視線の先を目で追って見た。なる程李の言う通りだった。
確かにその人の片方の耳が透(す)けて見える。なんか花梨は不思議な気分だった。

 すると今度は斜め向こう側から歩いて来る若いカップルの方に目が吸い寄せられた。
 今度のカップルは女の人の方の目の瞳の部分が透(す)けて見える。それは結構異様に映り花梨には気味が悪くさえ思えた程だった。なので花梨は今更ながら自分のいるこのあやふやな状態と言うかこの世界にいる自分を思ってちょっぴり恐怖心さえ覚えた。

「あの女性はね。あの男の人よりもずっと年上なの。だから現世では人目に付いて会い難いから、あの人達は隠れて会いたいが為に、こうして此処に来てこっそりと逢瀬を続けているのよ。ちなみにこの生と死の狭間の世界ってね、自分が好きな時代にタイムトリップをする事が出来るのよ。でも此処へ来るには条件があるの。どの時代で過ごしても良んだけれど、その人は一つの肉体的機能を失ってしまうの。
< 38 / 53 >

この作品をシェア

pagetop