セピア
 もう少し先に居眠りパーキングがある。
少しの間眠るだけで目がシャキっとしてだいぶ運転がラクになる事は経験で解っていた。
 なので峻甫は其処で少しの間仮眠を取ろうとしていた。
が、しかし皮肉にもその居眠りパーキングの数メートル手前の横断歩道で、ついに耐え切れなくなってしまった瞼(まぶた)が一瞬閉じかけたその時、峻甫は不覚にも青信号で横断歩道を渡っていた若い女性を撥(は)ねてしまったのだ。

 居眠り運転の上信号無視である。峻甫はその場で凍りつき顔が一瞬にして蒼白(そうはく)になった。

「ど・どうしょう。ぼ・僕は人を轢(ひ)いてしまった?!」

 早朝の7時半である。
幸いにもその時他に車は通っていなかった。
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