待っていたの
一歩踏み出さなくちゃ………………。



大丈夫、大丈夫よ。


今度はあの人がいるもの、上手くいくわ。


――その己の思考に疑問を抱くこともなく、自然にそう思った彩。


たばこのヤニで黄ばんだ、リビングの壁紙と時計の秒針の音、自分の前に置いた麦茶のグラスの氷揺れる鈴やかな音、今年のカレンダーの家族写真がなぜだかもう、最後の気がして目に焼き付けておかなければという気持ちになった。




じーっと見つめて、見つめている内に眠たくなった。うとうとと、瞳を閉じる……いけない、寝ちゃダメだ。

そう思いながらも、睡魔には勝てない。


――――
―――
――



ふと気がつく、目を擦り重いまぶたを動かせば、私の視界全体に広がったのは…わが家のたばこのヤニで黄ばんだリビングの壁紙ではなく、野原だった。


「は…!?」

私、ニートの上に夢遊病だったの!?


夢だということが考えられるが、疑問が浮かぶこの状況はおかしい、海外経験のない私の夢に出てくるのは、日本か宇宙くらいしかないのに。

それかタイムスリップした、へんてこりんな世界。

拉致!?まさか…………ねぇ?

誰に聞くわけでもなく頭の中で考えた言葉、自分が混乱しているのがわかる。



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