七狐幻想奇譚
コンビニ行くだけでも一時間以上はかかる。最近ではネットで買い物もできるとあって、わざわざ買いに出かける人はほんどいない。



自動ドアが開き、中に足を踏み入れた瞬間、ひんやりと涼しい空気に汗も引いていく。ここまで歩いてきた疲れも吹き飛ぶってものだ。



「いらっしゃいませ」



真っ黒なストレートの髪。見た感じ一緒くらいの年齢だろうか。どこか神聖な雰囲気を持つ美少女に、ドキマギしながらレジ前を通り過ぎようとすれば。



「――今夜、お祭りいかなきゃだめよ」



凛とした口調ではっきりそう告げられ、思わず足を止める。



今、この女の子は何と言ったか。



店内に客はいない。



桃花の額から冷や汗が流れる。どうして初対面のあなたが言い切れるの? しかしそんな思いとは裏腹に言葉となって、出てこない。


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