七狐幻想奇譚
声にならない声を上げたその時――別の声がした、強い意志を持った声が。



「おい狐、それ以上手だしてみろ。血祭りにあげてやるからな」



凛とした涼やかな、よく通る声。



さっきまで怖かったのに、今は怖くない。



不思議に思い、自由になった身体で振り向けば紺碧の髪の少年が、暗闇を怖い顔で睨んでいた。



「……やっぱり来たね、神崎夏野」






暗闇から現れたのは、狐面を被った少年だった…………。






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