ブルービースト
──…病院の廊下に響き渡った、大きな声。
その声色は、ユノの心境をこれでもかという程表していた。
驚き、
困惑、
微かな喜びと哀しみ。
「な、なんでって…」
僅かに気まずそうに目を逸らすブロード。
逸らしたその先には、少々驚いてこちらを見る女性がいた。
その人は複雑そうに小さく笑むと、哀れな男に助け船を出してやる。
「ユノ、やめなさい。私がブロード君に頼んだのよ」
静かなその声に補佐はピタリと止まる。
今にも中将を絞め殺さんとしていた手をゆるりと下ろし、そしてまた女性に目を向けた。
「……どういうこと?」
「私が頼んだの。ユノに会いたいって」
微笑みながら言うその人。
その内容にユノはカッとして、叫びながら女性のいるベッドまで早足で向かった。
「会いたい!?何が!アンタからいなくなったんでしょ!?」
「…………………。」
「アンタが私を軍に売った!」
その言葉に女性は辛そうに目を伏せた。
そんな女性の脇にたどり着き、見下ろすユノ。
自分と同じ紫の瞳をこれでもかと睨み、再び啖呵を切る。