ブルービースト
「今さらっ…何が会いたいよ!私がどれだけ必死に生きてきたか…わかってるの!?」


「………ごめんね」


「謝ってすむことじゃない!アンタなんか母親失格だ!!」



喚きたてるユノと俯く女性。


黙って見ていたブロードは、話にならなさそうだと溜め息をついた。


それから壁に寄りかかっていた体を起こし、腕を組んで言葉を発する。


たった一言、



「ユノ」



と短く言うだけ。



それだけなのに、何かを感じ取ったユノは怒鳴るのをやめた。




「……なんですか」


「気持ちはわかるけどさ。…ユイアさんの話も、聞かなくちゃ」


「…………………。」



ユイア──ユノの母親である女性は、そのブロードの発言に少し泣きそうな顔をした。


ユノはブロードを見つめてから、何かを抑え込んだような表情で母親を振り返る。




病室の白いカーテンが、ふわりと風に揺れた。





「……言い訳になるけれど。聞いて、くれる?」


「…………………。」



懇願するような言い方にユノも黙って頷くしかなくなる。


了承した娘にホッと安心したような顔をすると、ユイアはぽつりぽつりと話をはじめた。






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