ブルービースト
『クリス=フィーリス様、ロビーにお客様がいらっしゃいます』
女性の機械的な声はそれだけ言うと黙り込んだ。
すぐに行きます、そう言って通信を切る。
傍から強烈な視線を感じるが、クリスはポチをソファーに降ろすとそのままその場を去ろうと…
「待ぁ~ちなさいよぉ♪」
「私達も行きます♪」
「……………………。」
ガシガシッ、と両腕を掴まれ一旦制止。
そっと視線を降ろすと、しがみついて離れない女性二人。
両手に花、という言葉があるが、クリスの脳内に浮かんだのは両手に鬼という言葉だった。
何が何でも着いてきて、ロビーでブロードらを待つつもりだ。
振り払ったって結局は来るのだろう。
「……大人しくしてて下さいよ」
哀しげに鳴くポチに目で謝りながら、なんだか保護者みたいになってきたクリスは二人に半ば強制的にロビーへと連行されたのだった。
お母さんの苦労はいつの時代も絶えない。
「………お母さんじゃありません」