ラスト プリンス
「じゃなきゃ、あんな野良猫引っ掛けてこねぇよ、バーカ」
そう軽口を叩きながらも、手はあたしの頭を撫でる。
心地いいようなふわふわした感覚に思わず目を瞑ってしまいそうになり、耕太の手首を掴んだ。
「なに。 野良猫」
っ?!! あたしも野良猫だったの?!
ま、まあいいや。それは後でなんとかするとして、今は。
「……昨日は、あ、ありがとう……」
「…………」
えーーっ! まさかの沈黙っ?
「その、ね。だからっ……」
耕太のおかげで家で泣かなくて済んだ、と言おうと思ったけど。
お礼だけでも恥ずかしいのに、それを言ったらなんだか悔しくなっちゃうわ。
「………何でもない」
ふるふると静かに首を横に振るあたしは、その一瞬だけ耕太から目を逸らした。
耕太の手首を離して、視線をネクタイに落とす。
「ぎゃあぎゃあうるせぇ時もあれば、今みたいにしっかりものを考えてしゃべってさ」
くいっと、何の前触れもなく手慣れた手つきであたしの顎を上げる耕太。
……どうしよう。
あたしキスされてもいいって思った。
やだっ……負けたくないのに!