ラスト プリンス
「……ああ。 で?」
で?って言われても。
「どっちだと思う?」
「………さあな」
は? いやいやいや。答えてくれなきゃ困るって。
きっと、鳩が豆でっぽうを食らったような顔してるわ、あたし。
「どっちだろうと梨海は梨海。てか、知ってる。お前が人によって立ち振舞いから言葉遣いを変えてることくらい。それに、そんなこと気にする必要ねえ。俺の目の前にいるのが七瀬梨海ならいい――」
「わけない……あたしは。あたしは――」
「梨海」
例えば小さな子を怒る父親のように。
そう思ったのは、歳の差をじわりと感じたからか、それとも、その低くどことなく心配と愛しさが混じった声からなのか。
自然と落ちていた視線を上げれば、思っていたよりも耕太は優しい顔をしていた。
……ははっ。あたし、ばかみたい。
どうして耕太を信じようと思わなかったんだろ。どうして嫌われることしか考えなかったんだろう。
嫌われることを気にしてたら前に進めないわ。
「好き。あたし、耕太が好き。だから、信じるね」
耕太に言ってるんじゃない。自分に言い聞かせてるの。
固い決意をするために。
あたしは勇気を振り絞らなくちゃならないの。