ラスト プリンス

「何を聞いても俺は。俺の気持ちは変わんねえよ」

「こうったっ………」

 どうしてあなたはこんなに優しいの?

 いつもはあたしを怒ってばっかだったのに、調子狂うじゃない……っ。

「だいたい梨海が言いたいこと分かったんだけど、どうする?まだ話す?」

「……分かったのっ?」

 半信半疑で耕太の顔を見上げれば、この上なく優しい笑顔が待っていた。

「寂しかったんだよ、梨海は。一人っ子で親は自分のことを気に掛けてくれない。家の今後ばっかで、構ってほしかっただけ。ただ、それが男に走ったのは悪いけど、それは仕方なかった」

 寂しかった……? あたしが……?

 だから、男ととっかえひっかえで寝てたってそう思ってるの? 耕太は。

「……違うよ。そんな寂しくなんか――」

「今日から俺に甘えろ。うんと甘やかしてやるから」

「………っ」

 もしかしたら、誰かにこうやって抱きしめてもらいたかったのかもしれない。

 お父さんでもお母さんでも。

 優しく気持ち良いこの温かい腕の中で、愛を感じたかった。

「……でもねっ。そんな、男に走ったことを仕方ないなんてっ……。あたしは汚なっ――」

「それ以上言うな」

 キツくキツくあたしを抱きしめる耕太はゆっくりとあたしの背中を、赤ちゃんを寝かし付けるように、ぽんぽんと撫でる。

 それは何だか、ピンと張り詰めた緊張の糸を解してくれるような、そんな感じがした。

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