ラスト プリンス


「おい、梨海。笑ってんじゃねぇよ。早く化粧落とせ」

「……はーい」

 あたしの中では、結構ふざけて言い合ってるのかと思ったけど。

 意外と耕太の目が真剣っていうか、怒りを感じられて。

 とばっちりを受けたくない一心で、素直に化粧を落としに行くことにした。

 社長室を出てすぐ右隣に化粧室があったため、おそるおそるそこに入る。

 ほら、人の家のトイレとかって妙に緊張しない?

 ………あたしだけかなぁ。

 お店の方もそうだけど、トイレも綺麗。

 キツすぎずちょうどいいフローラルの消臭剤の香りと、ほわんとした柔らかな光。

 入ってすぐ左の水回りも水垢がひとつもない。

 振り返るとそこには化粧直しのスペースが若干ある。

 そこにポーチを置き、中からクレンジングシートを取り出し瞼に乗せた。

 数秒後、クレンジングシートを見てみると、マスカラとアイラインで真っ黒。

 もう片面を使い違う瞼に乗せ、手早く化粧を落としていく。


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