ラスト プリンス


 全て化粧が落ちたところで、昨日耕太がやってくれたメイクを見よう見まねでやってみる。

 大きめなパウダーブラシで触れるくらいにファンデーションをのせた。

 目元は、アイラインを引かずにゴールドのアイシャドウ、そしてカールした睫毛にマスカラ。

 最後にペールピンクのグロスをのせて完了。

 なかなかの出来じゃない?

 自信を持って社長室に戻れば、カイさんがデスクに向かって何かをしていた。

 ちらりとソファーに目を遣れば、雑誌片手にコーヒーを飲む耕太の姿。

「……ねぇ」

「ん?」

「カイさん、何やってるの?」

「仕事。化粧落としたか?」

 コーヒーが入ったマグカップを背の低いテーブルに置いた耕太が振り返った。

 あたしの顔を見た耕太は、ことさら甘く微笑み「隣座ってもらえますか」と一言。

 ……分かった。あたし、こっちの敬語バージョンの耕太苦手だ。

 妙に逆らえなくなる感じなのに、何故かきゅんってくる自分がイヤ。


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