ラスト プリンス


 サインを書き終えたカイさんは、耕太に眩しいほどの笑顔を向けた。

「これでどうだっ。 ってことで、約束通り、僕は帰るから。仕事入っても電話しないでね」

 自信満々に、犬だったら尻尾をちぎれんばかりに振ってるような、そんな表情のカイさん。

「はいはい。 それで?残りの三件はいつやるんだ?」

 サインを確認した耕太は、抑揚のない言葉で、カイさんの表情をぴきりと固まらせた。

「………。あ、明日以降にやろうかな?」

「やれ。疑問系にすんな」

「と、とりあえず、僕は家に仕事を持ち帰らない派だからっ。 あとは、よろしく頼んだよ!」

 にかっと笑ってはいるものの、一秒でも早く耕太から逃れたい思いが感じとれて。

 引き止めて、もう少し話したかった気持ちを閉じ込めた。

「お疲れさまでした」

「梨海ちゃん、明日も今日と同じくらいの時間に来れる?」

「はい、大丈夫ですよ」

「じゃあ、来てねっ。 それじゃ」

 どの女性が見てもうっとりしてしまうような笑顔に、あたしも例外ではなくうっとりとして、手を振った。

 はあ……どうして既婚者なのぉ。


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