ラスト プリンス


 耕太はあたしを一瞥し、マグカップに口をつけ、「普通」と。

 ふっ、普通って何よっ?!

「美味しいかまずいかで言ってよっ」

「使用方法を間違えなくちゃ今まで通りの味だろ」

「だったら!“普通”じゃなくて“美味しい”でしょうっ」

「うるせぇな。 ……おい、カイ!」

「んー?なあに?」

 いつの間にかデスクに戻っていたカイさんは、てきぱきとデスクの上を片付け始めている。

 一言であたしとの会話を放り投げた耕太は、マグカップをテーブルの上に置きカイさんに近づいた。

「デザイン」

「そこに置いてあるでしょ」

「サイン。書き忘れてる」

「そんなの耕太が――」

「俺の字とお前の字。時田が気付かないわけないだろ。 まぁ、確実に気が付くだろうから、その時はデザインやり直しだな。 じゃ、そういうことで」

「だーっ!! ごめんって! サインくらい自分で書きますっ。 書かせてください!!」

 出来上がったウエディングドレスのデザインが書かれたスケッチを、ひょいっと手に取った耕太から奪い取り、ささっとサインをするカイさん。

 申し訳ないけど、社長を手のひらで転がす部下ってどうなの?


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