ラスト プリンス


 愛されたい。

 一度でいいから、相思相愛、という関係を味わってみたい。

 ホント、一度でいいのよ。

 あたしの将来なんてたかが知れてるようなもんなんだし。

 今日は家に帰りたくない。

 そう思って、いつも曲がる道の反対の道へと体を向けた。

 普段と違って見慣れない道を歩きながら、高くひとつに結っていた髪を下ろす。

 跡が付いていたって別にいい。

 ただ、濃く施している化粧が、泣いた所為でぐちゃぐちゃになってる気がして。

 それを隠したいから、ボサボサに近くなった巻き髪を利用しただけ。

「……あっ……」

 不意に顔を上げたその時。

 少し先のショーウィンドーの中にウエディングドレスが飾られているが見えた。


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