緑の魔法使い
思わずきゅっとそばにあった手を掴んでしまう。
驚いたように振り向いた橘君は、それでも振り払う事無く優しく握り返してくれた。

「羽鳥さんも綾瀬川さんもさっきまで起きてたけど、随分疲れていたようだから朝まで休んでもらってる。
二人とも隣の部屋で休んでもらってるから心配しないで」

もう片方の手で手にした手ぬぐいで汗を拭ってくれる。
額に張り付いた髪をそっと剥し、首筋の熱を奪うように肌を滑るそれにすくぐったさを覚える。
体の総てを触られた手が怖くて、たとえ治療の為とはいえその手が嫌いだったのに、今ではその優しい手が心地良い。
安心するというのだろうか。
酷く恥かしい思いはしたが、その手から作り出される薬は確実に私を治してくれる。
信頼できる。
そんな手に甘えるように頬を押し付けて瞼を閉じる。
何度か、私を安心させてくれようとその手で頬を撫でて答えてくれる手の心地良さに、また眠りへと付いた。

幼い頃の夢を何度か見た。
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