【続】俺様王子と秘密の時間


顔が近い……。

距離が近くて目線を泳がせた。

そんなあたしのワイシャツの襟元に指先を伸ばして、グイッとひっぱった。


驚いて身体が強ばってしまう。



「お前、オレと初めて会ったときこの高校の制服着てたろ?」

「あ……」


そういえばそうだった。


着替えていたらいきなり黒澤拓海が入ってきたから、あたしは慌てて制服を着たんだった……。

そして黒澤拓海はあたしの制服を見て、この高校かと聞いてきた。



「オレ、その時はもうこの高校に入ること決まってたんだよ」


そう言うと黒澤拓海は緩んでしまっていたあたしのネクタイをキュッと絞め直して正してきた。


あたしはあの時、黒澤拓海が言ったことを思い出していた。



『ぷっ。今にわかる。オレのことは拓海って呼んで?な?』


今ならその意味がわかる。


黒澤拓海はあたしとまた関わることになると、わかっていたんだ。

 

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