【続】俺様王子と秘密の時間
――パシッ
「えっ?ちょっ……」
あたしの手首をガッチリと掴み、黒澤拓海は突然噴水の中へ走りだした。
「プリンスのお出ましだ」
え……?
黒澤拓海は小さな笑みをこぼし、噴水の向こうを見つめてそう言った。
その視線を辿るとそこにはワイシャツとネクタイを乱し、荒々しく息を吐く千秋がいた。
――トクンッ
薄暗くなり始めたこの場所でも、王子様の憎たらしい程の端正な顔立ちが、夕陽を浴びた茶色い髪が、鋭さを放つ瞳が。
視界に映すだけでどうしてこんなにも、身体中が千秋でいっぱいになるんだろう……。
淡い期待が、さらに膨らんで舞い上がってしまいそうになる。
「ったく。もっと焦った顔しろよなぁ。さすがは氷のプリンス」
千秋はクールフェイスを崩さずにこっちへ向かってくる。
黒澤拓海は噴水へ足を進めるけど、千秋が見てるっていうのに何をする気?