【続】俺様王子と秘密の時間
――バシャッ!
水を蹴るような音がしたと同時にあたしは目を瞑り、もうダメなんだって思って諦めかけていた。
「んっ……」
柔らかい感触がした。
黒澤拓海の唇があたしの唇を塞いだんだって思ったのに、胸が、心が、ちっとも痛まなくて……。
それどころかこの優しいキスに、トロトロと溶けていくような気がしてそっと目を開いた。
「――っ!?」
信じられない光景に固まる。
どうして……?
水しぶきを浴びる茶色い髪の毛、伏せた瞳、長い睫毛、整った眉毛、頬に添えられた骨ばった手。
――そして甘い香水の匂い。
視界に映るのはずっと待ち焦がれた人で……。
「さすがはプリンスだな」
黒澤拓海の声が聞こえた。
その瞬間に千秋の閉じていた目が薄く開いて、唇を離さずに声のした方へ瞳をチラッと向ける。