【続】俺様王子と秘密の時間
千秋は黒澤拓海に視線を移す。
ぐっしょり濡れたワイシャツを絞りながら、黒澤拓海は噴水の中を一歩一歩足を進める。
「コイツ、オレのなんだけど?」
最初になんの躊躇いもなく口をきいたのは千秋。
その瞳は仄暗い光を含んでいた。
「王子さ、来たなら来たで焦った顔しろよ?こっちはシイにキスすんぞって、予告してんだか……」
「焦る理由がねぇな」
黒澤拓海が言い終える前に遮る。
千秋はずぶ濡れになっていることなど気にもせずに冷笑した。
「あーっ!ほんっとムカつくわ。その自信満々な顔……」
黒澤拓海はヘラヘラと笑いながら長い髪の毛をかきあげて、ウザいとでも言いたげに息を吐いた。
「5時の噴水のせいでオレとシイが隠れちまったから、プリンスと言え、ぜってぇ焦った顔して駆けつけてくるって思ってたのによ」