【続】俺様王子と秘密の時間
「さっきはありがと……」
ちゃんとお礼を言えてなかった。
もしかしたらまた“バーカ”とか言われるのかなって思っていた。
……だけど。
「シイは軽い女じゃねぇから、そう言っただけだ」
ウェーブをぐしゃぐしゃにして、プイッとそっぽ向いた。
西に傾き始めるオレンジの光が、羽鳥の頬を赤く染める。
「どこ行くんだ?」
「……」
「さっき聞こえたぜ?禁断の部屋でアイツが待ってんだろ?」
わかりきっていたように言うからコクンと頷いた。
羽鳥の顔を見れない……。
「行くな」
あたしは顔を上げた。
羽鳥はあたしを見ずに呟く。
「羽鳥……ほんとにさっきはありがと……」
眉を下げた羽鳥の顔が捨てられた子猫みたいに見えて、また胸が軋むからあたしは走り出した。
「もう限界だ……」
羽鳥がなにか言ったような気がしたけど、あたしには聞こえていなかった。