【続】俺様王子と秘密の時間
ポツリ、ポツリと雨が降る。
同時にヒュウゥッと風が吹き始めて次第に強くなる。
正夢になるのだと思った。
そう思うと堪らなく怖くなって、これが夢なら一秒でも早く覚めてほしいと思ってもこれは紛れもなく現実だった。
「お前、もう逃げないんじゃなかったのか?」
真ん前まで来た千秋は俯き加減に伏せるあたしの顔を覗きこんでくる。
「オレに言ったよな?去年の文化祭の日“もう逃げない”って?」
なだめるような穏やかな口調で問う千秋に驚きながらも、忘れかけていた記憶を思い出す。
それは去年の文化祭の日。
禁断の部屋で過去を打ち明けたあたしが千秋に言った言葉だった。
「だから今の椎菜は逃げるなんて卑怯なことしねぇし、自信持って正直に言うって信じてたけど?」
穏やかな口調が胸を締めつけた。
ギュッと赤い傘を握りこんで顔を上げる。