【続】俺様王子と秘密の時間
「千秋……」
瞼に落ちる雫が夏だというのにやけに冷たかった。
そばにある横断歩道や交差点を、降り始めた雨に帰りを急ぐ人々が慌ただしく走り抜けていく。
その中をあたし達3人だけが動けずにいた。
「お前を信じてた」
雨の中でもよく通る千秋の声はあたしの鼓膜を揺るがしす。
ブラウンの瞳はこの上なく真剣で千秋のその言葉にあたしの中でつっかえていたモノが消えた……。
ずっとわからなかった。
千秋の思っていることが。
“信じてた”
千秋がそう言った時あたしの中でパチンとなにかが弾けた。
何度でもこだまする千秋の言葉。
心の奥にある鉄砲玉が溶けて消えたような気がした……。
逃げないと決めて千秋に言った言葉を、今のあたしはどこかに置き去りにしていたんだ……。
雨は一気に激しさを増した。
「椎菜」