龍の世界
*****


麻綾と幾斗が出掛けた屋敷に、一人の男が帰ってきた








「若、浅見です」


「どうぞ」



部屋の主の声を聞き、浅見はスッと障子を引いた。






中には主の若桜皇也と、柳瀬和輝の2人。







「黒椿が動きだしました」


「・・・詳細は?」


「詳しい事はまだ。現在湯川が調べに回っています。今分かっているのは、麻綾の学校近くで黒椿の配下が見掛けられました」


「ついに来ましたか。諦めるとは思っていませんでしたが・・・思ったより早かったですね」


「どうする、皇也?」



柳瀬が若桜に尋ねる。




「さて・・・どう動くべきか・・・───」



若桜は机に肘を付き、手を組んだ。



それを見た柳瀬が口を開く。




「取り敢えず、今動くのは早いと思うよ。あまり早く動くと向こうが逃げてしまうだろうね」


「そうですね。あまりこの事を長引かせるのは、あの子達にとっても良くありません。が、今はまだ動向を探ってください。
ああ、でも向こうが手を出してきたら構いませんからね」



「はい」



浅見はその答えを聞き、一度頭を下げ、部屋を出ていった。














「全く、次から次へと……」






若桜は部屋の南側の丸窓の障子を開けた。








「また何か考えてる?」


「ふふ、さぁ。どうでしょう?」



尋ねる柳瀬に背を向けたまま若桜は答えた。









「幾斗には言うの?」


「いいえ…」


「甘いね、君も。あの非情で知られる神龍が、聞いて呆れる」


「何とでも。私はこの為だけにこの地位にいるんです」





柳瀬からは、若桜の顔は見えない。
もう10年以上の付き合いの柳瀬にも、今の表情は分からななかった。






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