-KAORI-
『あんたの、被害妄想は、ななまで巻き込んでんだよ。自分で言えば?』
芭菜さんの冷たい視線の先は、あたしの他の誰でもない。
『芭菜、川辺も川辺で、色々大変なんだよ。』
『自分で言わなきゃ解決しねぇじゃん。』
「分かった…。あたし、言ってくる。」
『川辺…、大丈夫?』
「行ける。」
自分で言わなきゃ、解決したって言わない。
勢いで店を飛び出すと、健の家に向かって走りだした。
ピンポーン
インターホンを震えた手で押すと、耳をすませた。
段々近づいてくる足音に、ただ鼓動が上がるだけだった。
『どちら様?』
明らかに健のお母さんの声だった。
「川辺です。」
『あら、あかりちゃん!今すぐ通すわね。』
ドアが開くと、健の香りが舞い込んできた。
『二階にいるわよ…。』
そう言ったおばちゃんの顔は、何か隠しているような、戸惑った顔だった。